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データセンターの電力不足はなぜ起こる?現状と原因、対策を解説

AIやクラウドサービスの普及にともない「データセンターの電力不足」という言葉を見聞きすることが増えました。ただ、何がどのように不足しているのか、詳しく知る機会は多くありません。電力不足の背景には、電気をつくる力だけではなく、届ける設備の問題もあります。

この記事では、データセンターの電力不足が起こる仕組みや現状、原因などをわかりやすく整理します。あわせて、国や事業者が進める具体的な対策も紹介します。

データセンターが電力不足を引き起こす?

データセンターをめぐる電力不足には、「データセンターへの電力供給が不足する問題」と、データセンターの電力需要の高まりによって「社会全体への電力供給に影響する問題」の2つがあります。

段階1:データセンターへの電力供給が不足する

データセンターへの電力供給の不足とは、新設に必要な電力を確保できず、稼働開始までの計画が遅れることを指しています。

データセンターを新設するため、電力会社に申請し、実際に変電所が整備されて電力が届くまでに、6~10年の期間を要するとされています。変電所とは、送電線を流れる高い電圧を、使いやすい電圧に下げる施設です。とくに地方へデータセンターを新設する場合は、既存の電力設備では足りず、変電所の整備から始めなければならないケースが多いため、影響は大きいといえます。

また、国のエネルギー基本計画では「十分な脱炭素電源を確保できず、データセンターや半導体工場への投資機会が失われる事態は避けなければならない」としています。データセンターへの電力供給が遅れると、建設や稼働の計画だけではなく、AIなどの技術発展や産業競争力にも影響する可能性があるため、安定した電力を確保することが重要です。

出典:資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」

段階2:社会全体への電力供給に影響する

データセンターの電力需要が急激に増えると、送電網の余力が圧迫され、地域住民やほかの産業が使う電力などにも影響が及ぶおそれがあります。

電気は、発電所から送電線や変電所などの設備、いわゆる送電網を通じて利用者に届けられます。送電網にも、地域や設備ごとに供給できる電力の上限があります。

一方、データセンターは24時間365日、ほぼ一定の電力を使い続けるのが特徴です。電力需要が大きく変動しにくいため、夏場など地域全体の電力需要が高まる時期には、送電網の余力が小さくなり、ほかの利用者への電力供給に影響が及ぶ可能性があります。

実際に、首都圏では、データセンター向けに電力を使う枠を仮に押さえる「仮確保」が、2025年8月時点で累計約1,520万kW分に達しています。建設需要に対して送電網から供給できる電力が不足しており、データセンター以外の需要にも影響する可能性が指摘されています。

海外でも、電力需要の増加による影響が生じています。ノルウェーでは、製造企業が工場を拡張しようとしたところ、同じ送電線にデータセンターの新規接続がすでに申し込まれており、拡張を断念せざるを得ないケースがありました。

海外ではデータセンター建設に規制をかける国や地域も

海外では、データセンターの建設そのものに規制をかける国や地域もあります。膨大な電力使用によって、電力網への過度な負担や脱炭素化の目標達成への影響が懸念されていることが背景にあります。

アイルランド、ドイツ、中国、アメリカの一部の郡やオランダの首都アムステルダムなどでは、新設に関する規制などが導入されています。

出典:NIKKEI FT the World「世界でデータセンター建設制限 電力網への負荷深刻」

特定地域では問題がより深刻に

総務省・経済産業省の資料によると、国内のデータセンターは東京圏・大阪圏に集中しており、サーバールームの床面積ベースでは88%を占め、東京圏だけで64%の割合になっています。

東京や大阪には、インターネット通信を相互接続するインターネットエクスチェンジや光ファイバー網などの通信インフラが整い、大企業や金融機関などの利用者も集中しています。電力供給の安定性に加え、両都市に拠点を置くことで災害時にも事業を継続しやすいことなどが背景にあります。

一方、データセンターが集中すると、地域の電力インフラへの負荷も大きくなります。その代表例が千葉県印西市です。印西市は「データセンター銀座」とも呼ばれ、国内有数のデータセンター集積地です。

印西市周辺を含む地域では、送配電設備の供給可能量を上回る需要の申し込みが寄せられているとされています。今後もデータセンターの新設・増設が続けば、電力需要に対応するためのインフラ整備が課題となるでしょう。

海外でも、集積地ではデータセンターの占める割合が高く、電力網への負担が大きくなっています。国際エネルギー機関によると、アメリカのバージニア州ではデータセンターが電力供給の約25%を消費し、アイルランドでも約20%に達しています。

出典:総務省・経済産業省「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回事務局説明資料)」

出典:資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」(2025年10月15日)

データセンターの電力需要は年々増加

日本の電力需要は、人口減少や省エネの浸透により、2007年度以降は減少傾向が続いていました。ところが、近年はデータセンターや半導体工場の新設・増設などによって、増加が見込まれています。

全国の電力需給の見通しをまとめる電力広域的運営推進機関の想定では、2024年度から2034年度までの10年間で、年間の電力需要が約465億kWh増える見込みです。このうち、データセンターによる増加分は約440億kWhです。1世帯あたりの年間消費電力量は約4,000kWhとされているため、換算すると約1,100万世帯分に相当します。

一方、国際エネルギー機関によれば、世界のデータセンターの消費電力量は、2024年は約415TWhでしたが、2026年には約565TWhに、2030年には約945TWhに達すると見込まれています。TWhはテラワット時と読み、1TWhは10億kWhにあたります。

ただし、この見通しは確定したものではありません。AI向けサーバーの登場でこれまでの10倍以上の電力が求められ、電力供給が追いつかなくなる可能性があるという見方もあります。しかし、光素子のような技術革新によって消費電力が大きく下がる可能性もあると指摘されています。

出典:資源エネルギー庁「今後の電力需要の見通しについて(2025年1月27日)」

出典:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2025 年度)」

出典:国際エネルギー機関「AIからのエネルギー需要」

【補足】データセンター1棟あたりの消費電力

データセンターの規模は、施設によって大きく異なります。近年増えているハイパースケール型は、サーバーを5,000台以上収容できる超大型の施設で、消費電力が数十MW規模に達する施設もあります。

MWはメガワットと読み、1,000kWにあたる単位です。契約容量が3〜5kW程度の家庭に単純換算すると、50MWの施設は約1万〜1万6,600軒分にあたります。

サーバーを収容するラック1台あたりの電力は、AI向けでは従来の約10倍です。発熱量も約10倍になるため、空気で冷やす従来の方式では追いつかず、水冷が必要になっています。

データセンターの消費電力の内訳

データセンターの電力は、サーバーなどのIT機器と、冷却などの周辺設備で使われます。効率を示す指標がPUEです。PUEは、施設全体の消費エネルギーをIT機器の消費エネルギーで割った値です。

たとえば、PUEが1.2なら、IT機器が1の電気を使うとき、施設全体では1.2の電気が必要という意味になります。1.0に近いほど、IT機器以外で消費するエネルギーが少なく、効率が高いことを示し、効率のよい施設ではPUEが1.1~1.2程度とされます。

IT分野のリサーチ・アドバイザリー企業であるガートナージャパンの調査では、2025年、日本のデータセンターの消費電力量は18TWhでした。その内訳は、従来型サーバーが8TWh、AI向けサーバーが3.5TWh、冷却やその他のインフラが6.5TWhです。施設全体の消費電力量をIT機器の消費電力量で割ると、PUEは約1.56となります。

2027年には、データセンターの消費電力量は29TWhまで増えると予測されています。内訳は、従来型サーバーが8TWh、AI向けサーバーが11TWh、冷却やその他のインフラが10TWhで、PUEは約1.53となる見込みです。

従来型サーバーとは、Webサイトの閲覧やメール、一般的なクラウドサービスなどの処理に使われるサーバーです。一方、AI向けサーバーは、生成AIなどに必要な大量の計算処理を行うために設計されています。

2025年から2027年にかけて、従来型サーバーの消費電力量は8TWhで横ばいと予測される一方、AI向けサーバーは3.5TWhから11TWhへと約3倍に増える見込みです。生成AIの普及によってAI向けサーバーの需要が高まり、データセンター全体の消費電力を押し上げる要因となっています。

出典:IT Leaders「2026年のデータセンター電力消費は前年から26%増、AIサーバーが主因─米ガートナー」

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データセンターの電力供給におけるボトルネックは送電網の整備

電力不足を解消するには、発電所の増設という対応策を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際は電気を必要な場所へ届ける「送電網の整備」が、大きなボトルネックになっています。

工場で商品を生産しても、道路がなければ店舗まで届けられません。電気も同様に、発電しただけでは利用者に届けられません。

送電網などの整備工事には、用地の取得や地元の理解、工事を担う体制や機材の確保のために、多額の費用と長い期間がかかります。そのため、需要が増えるたびに個別に対応する方法では迅速な整備が難しく、データセンターなど電力を大量に使う事業者の新設や増設にも影響するおそれがあります。

変電所の建設に必要な高圧送電線の敷設には、10年単位の時間がかかります。対して、多くのデータセンターは3~4年で完成します。そのため、送電網の整備期間とデータセンターの建設期間にミスマッチが生じ、プロジェクトの遅延リスクが高まっています。

ただし、送電網の整備がボトルネックになっている一方、今後の電力需要の増加に備え、発電側の設備確保も課題となります。電力を「つくる側」と「届ける側」の両面から対応する必要があることを踏まえておきましょう。

電力が大量消費されるのはなぜ?考えられる原因と対処法を解説

データセンターの主な電力不足対策

電力不足対策を、国の制度、立地、新技術、再生可能エネルギーの4つに分けて見ていきましょう。

新制度の整備

国は2026年4月1日、省エネ・非化石転換法にもとづくデータセンター業向けの追加措置を施行しました。省エネ・非化石転換法は、事業者に省エネや非化石エネルギーへの転換を求める法律です。電源の確保とあわせて、データセンター自身のエネルギー使用を減らすことを目的としており、措置は大きく3つに分かれます。

出典:資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」

出典:資源エネルギー庁「データセンター業のベンチマーク制度 制度の概要」

目標・取組方針・実績を可視化

措置の1つ目が、目標や実績の可視化です。2026年度の提出分から、一定規模以上の事業者が提出する定期報告書に、データセンターに関する項目が加わりました。

電気使用量やPUEといった実績のほか、処理量あたりのエネルギー使用量を示すエネルギー消費原単位や、今後の目標と取組方針が報告の対象です。2025年度以降に新設したデータセンターなどの情報は、提出年度の年度末である3月31日までに、事業者が自社のホームページなどで公表することになっています。

情報公開には、先進的な取り組みを評価しやすくするとともに、周辺地域との共生を促すねらいがあります。

満たすべきエネルギー効率基準を設定

2つ目が、新設するデータセンターが満たすべきエネルギー効率基準の設定です。2029年度以降に新設する施設は、稼働開始から2年が経過した翌年度以降、PUEを1.3以下にすることが求められます。業界共通の指標で省エネの状況を評価する既存のベンチマーク制度では、事業者平均のPUEを2030年度までに1.4以下にする目標があります。

基準を満たせない場合、国は、省エネを進めるための改善計画である合理化計画の作成を指示します。従わなければ、公表や命令、罰金の対象となります。

テナント型データセンターもPUE算定の対象に追加

3つ目は、テナント型データセンターもPUEの算定対象に加えたことです。データセンター業は、事業形態によってハウジング型とホスティング・クラウド型があり、ホスティング・クラウド型には2種類の形態があります。

ハウジング型:IT機器を置く場所や設備を他社に貸す
ホスティング・クラウド型
 オーナー型:施設とIT機器を自社で保有する
 テナント型:他社から借りた場所に自社のIT機器を持ち込む

これまでPUEの対象は、建物や付帯設備の管理権限をもつハウジング型とオーナー型が中心でした。しかし、テナント型でもIT機器の稼働状況や空調の運用がPUEに影響することから、2026年度の提出分から算定対象に加えられました。

データセンターの地方分散

データセンターが大都市圏に偏っていると、その地域の送電網に負担が集中します。そこで進められているのが、地方への分散です。

国は、電力・通信・データセンターを一体で整備する「ワット・ビット連携」という考え方を打ち出しています。送電線の増強には、時間も費用もかかるため、電力供給に余裕のある地域にデータセンターを誘致し、データは光ファイバーで運ぶという発想です。

電力会社などは、送電網の空き容量や供給余力を確認できる「ウェルカムゾーンマップ」を公開しています。データセンターの地方分散が進めば、大都市圏の送電網への負担を減らせるほか、災害に強い体制づくりにもつながると期待されています。

出典:資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」(2025年10月15日)

新技術の導入

制度に加えて、使う電力そのものを減らす技術の開発も進んでいます。代表例が、液浸冷却と光電融合です。

液浸冷却 電気を通さない専用の液体にサーバーを丸ごと浸して冷やす技術です。液体は空気より熱を伝えやすく、空冷のファンなどの設備も減らせるため、消費電力の削減が期待できます。一方で、専用の液体や機器が必要になり、初期投資が大きくなる点が課題です。

光電融合 コンピューターの内部でやり取りしている電気信号を、光信号に置き換える技術です。光信号は電気信号に比べて伝送時の消費電力を抑えやすく、大容量の情報も高速に伝送できるため、省エネと高速化の両立が期待されています。光電融合研究センターでは、実用化の段階に入りつつあるとする一方、演算まで光で行うコンピューターの登場は2050~2060年代と見込んでいます。

PPAや再生可能エネルギーの導入

PPAは、Power Purchase Agreementの略で、電力購入契約のことです。あらかじめ価格や期間などを定め、電力を長期的に購入する契約を指します。

発電事業者などが太陽光などの発電設備を設置・保有・運用し、電力を利用する事業者は、発電された電気と環境価値を契約にもとづいて購入します。

環境価値とは、再生可能エネルギーで発電したことによる、CO2排出量の削減などの環境面での価値です。発電設備を自社で設置・所有する場合と比べ、初期投資を抑えながら再生可能エネルギーを調達できる場合があります。

PPAには、電気を使う側の敷地内に設備を置くオンサイト型と、離れた場所の発電所から送配電網を通じて届けるオフサイト型があります。

国内では、NTTデータグループが、首都圏の大規模なデータセンター向けに、太陽光発電所から20年間電力を調達し、使用電力の約2割をまかなう契約を結んでいます。

国際エネルギー機関は、データセンターの電力需要の増加に対して、再生可能エネルギーが大きな役割を担う一方、天然ガスや原子力などの電源も重要になると見込んでいます。ただし、再生可能エネルギーは天候などによって発電量が変動します。蓄電設備などによって電力需給を調整することも重要です。

データセンターの電力需要に対応するための設備整備などには費用がかかります。その費用を誰が負担するのかは、対策や制度によって異なります。電力会社などが負担する場合には、結果的に電気料金へ影響する可能性があることも踏まえておきましょう。

出典:国際エネルギー機関「AIへのエネルギー供給」

まとめ

データセンターの電力不足は、発電設備だけでなく、電気を届ける送電網の整備も関係しています。送電網の整備やデータセンターの地方分散、省エネ技術、再生可能エネルギーの活用などが進められています。

なかでも、電気を使う場所の近くで発電するオンサイト型PPAや太陽光発電は、送電網への負担を抑える方法のひとつです。

同じ考え方は工場や店舗、住宅にも取り入れられます。太陽光発電を導入すれば、自社や自宅で電気をつくり、電力会社から購入する電力量を減らせる可能性があります。

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